協和キリン
クリースビータで悲願の欧米進出 海外で成長軌道に乗り切れるか
2020/8/25 AnswersNews編集部 前田雄樹・山岡結央
協和キリンがグローバル展開を本格化させています。抗FGF23抗体「クリースビータ」が米欧で伸び、20年は売り上げのほぼ半分を海外で稼ぎ出す見込み。同薬を含む「グローバル戦略3品」を武器に、グローバル・スペシャリティファーマへの飛躍を遂げられるのでしょうか。
20年には海外売上高比率50%をほぼ達成
協和キリンの19年の業績は、売上収益が3058億円(前年比12.6%増)、コア営業利益が594億円(同18.0%)となりました。増収増益に貢献したのは、18年に米国と欧州、19年には日本で発売した「クリースビータ」。発売国の増加と着実な市場浸透で、前年比323%増の326億円(海外325億円、日本1億円)を売り上げました。
クリースビータの売り上げ増に伴い、海外収益比率もアップしました19年の海外収益は1196億円(35.9%増)、海外収益比率は39.1%(6.7ポイント増)。5年前と比較すると、海外収益比率は10ポイント以上上昇しました。20年はクリースビータとともに「グローバル戦略3品」と位置付ける抗がん剤「ポテリジオ」とパーキンソン病治療薬「ノウリアスト」も貢献し、さらに海外での売り上げが伸びる見込み。海外収益比率は47.1%まで上昇する予想で、16~20年の中期経営計画で目標とする50%にほぼ到達します。
協和キリンは19年7月、海外でのブランド力向上を目的に、社名を「協和発酵キリン」から「協和キリン」へと変更。薬事・品質保証・研究開発・ファーマコビジランスといった各部門がグローバルで連携できるよう構造改革にも着手しており、トップには海外人材を積極採用しています。
クリースビータが海外展開を牽引
海外とは対照的に、国内の事業環境は厳しさを増しています。主力製品として業績を支えてきた腎性貧血治療薬「ネスプ」は特許切れを迎え、バイオシミラーが参入しました。先手を打ってオーソライズド・ジェネリック(AG)を投入したものの、20年はネスプとAGの合計で4割近い減収を見込んでいます。持続型G-CSF製剤「ジーラスタ」など売り上げ増が見込まれる製品もありますが、ネスプの穴を埋めるには至りません。
こうした状況で協和キリンは海外展開を急いでいます。牽引役となるクリースビータは、協和キリンが創製したFGF23を標的とするヒト型IgG1モノクローナル抗体。現在発売しているのは18カ国で、新たに9カ国でも申請を済ませています。適応追加に向けた開発も進んでおり、20年6月には米国で腫瘍性骨軟化症への適応拡大が承認。欧州ではX染色体連鎖性低リン血症の成人適応を申請中です。
協和キリンはクリースビータのピーク時売上高を1500億円と予想。想定通りに市場を拡大できれば、同社として初のブロックバスターが誕生することになります。
売り上げは伸び悩み 新製品の上市も必須
海外展開は順調ですが、中計でもうひとつ目標に掲げたコア営業利益1000億円には手が届きそうにありません。20年のコア営業利益は600億円にとどまる予想で、目標達成は21年からスタートする次の中計に先送りされました。
19年には、協和発酵バイオの株式95%をキリンホールディングスに売却し、早期退職も実施。新薬に集中し、グローバルに事業を展開するための体制構築を進めています。
課題となっているのは、現在のグローバル戦略3品に続くパイプラインの構築。同社の後期パイプラインには、糖尿病性腎臓病を対象に臨床第3相(P3)試験を実施しているバルトキソロンメチルや、潰瘍性大腸炎・アトピー性皮膚炎の適応でP2試験を進めているKHK4083などがありますが、宮本昌志社長CEO(最高経営責任者)は「10年後、さらにそのさきはどうかと考えると、まだまだ十分ではない状況」としており、導入を通じたパイプラインの強化も検討していると言います。
初のブロックバスター候補が順調に成長し、グローバル・スペシャリティファーマへと変わりつつある協和キリン。一方、現在の中計で掲げている核酸医薬や再生医療への創薬モダリティの拡大は、まだ成果が見えてきません。協和発酵とキリンファーマの合併時からの悲願だった欧米市場への進出を果たした今、さらなる成長をどう目指していくのか。21年1月に発表される次の中計が注目されます。
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